ライ麦畑でつかまえて・サリンジャーの世界。

ライ麦畑でつかまえて、The Catcher in the Rye
ちょっと前に書いた再編集です。
本を読めど、なかなか感想なぞを書けないでいるなか
書いてみました。
サリンジャーの本は、
フトッした時に読むと嘘がないのでなんだか救われます。

永遠の謎・ライ麦畑でつかまえて
好きにはなれない
主人公ホールデン・コールドフィールド君は、
共感ができないようで、
誰でも思い当たる自分の部分だと思います。
何もかもをわかったように、他人を批判はできるけれども
自分の考えを人にわかるように説明もできず、
ユーモアがあって、人と違う確信が自分にあり、
センスがって、
人に憧れられるようなドラマティックな出来事や
人生変えてしまうような出来事を経験し、
迷いもなく決断し、
それをいとも簡単に捨てられる自信があり、
分別のある「大人で人と違う自分」なんてものがないと
自覚している
正直でどうしようもない主人公。
ただ、「嘘」や「偽善」が嫌いなだけで、
嘘と偽善を排除して
生きようとすると、
死がすぐそこにあるような
細い細い崖の上を歩いているような危なっかしい人生は、
今自らも生きている社会の皮を
一枚剥げば、そんなに変わらないと思います。

まさに自分にも当てはまることです。
40代の足音が聞こえ始め、思春期と今の違いは、
少しは、知識が増え、
少しは、色々な体験をして、
少しは、いろいろな角度で、自分や人間を見れて、
少しはいろいろな角度で
物事を見ることができるようになり、
正解とか正義だとか、結論などは無いと気づいて、
根拠のない自信が打ち砕かれ、
キラリと光る才能もなく、
相も変わらず同じところを回り続け、
同じような壁にぶち当たり、
社会で生きる力も獲得できていないし、
生活はあまりに不安定で、
自分がどっからどう見ても「凡人」だと気づきながら、
誇りと自信のようなものといえば、
人生を諦めないことと、
根拠のない自分の考えを捨てないことぐらい。
大人と言われる歳になりながら、
根本的には何も成長なんかしていない自分を
嫌いではないことぐらい。
自分はまともではなく、不適合者だと
自覚していることぐらい。
それでも生きるために、不適合な自分の歪みを
社会の中で生きる力に変える方法を探している
ことぐらいです。

ライ麦畑の世界は、少しイライラする世界の中で、
中途半端な出来事があります。
なんとなく作られる
ドラマや映画と違って、いい人に囲まれ、
わかりやすイヤな奴が出いてきて、
色々な意味のある出来事を乗り越えて成長し、
人に認められるような主人公や
美しげで、温かな世界がある
シラケる予定調和の世界ではありません。
ゴミがあって、
自分から見て、何もわかっていない奴らに囲まれて、
偽善者や脱落者がいて、
自分を理解してくれるような人なんていなくて、
なんとなくありそうな感じのしている
人と違う才能のようなものも、社会に適合できていなくて、
自分にも他人にも認められないような
ゴミ同然なものを
大事に抱えながら生きている世界。
孤独も本当に好きだけど、人を求めていて、
自分と他人は違うと知っているけれども、
あきらめきれなくて、
なんとか伝えようともがく。
「自分」と「他人」は違うし、
ぜんぜん違う色や感じ方、考え方、捉え方、
言葉の使い方、育ち方をしているので、
「自分を理解してもらうこと」
「他人を理解すること」はできないと思います。
家族や大切な他人を含めて、
自分の言いたいことは、上手く伝わらず、
その人々が言いたいことは、
上手く聴きとれないない。
理解できるわけなどないと
諦めたくもなりますが、そんなことをしたら、
すべてが、意味をなくしてしまうし、
「自分の仕事」の意味や役割も諦めてしまうことになると
思います。

自分の伝えたいことは、本当の意味で伝わることなんて
ないと諦めて、
その数十分の一でも伝われば、ラッキーだし、
伝わらなくても当然。
違った形で伝わってもその中で、
共有できる瞬間はあるし、
他人に伝わることもしっかりとあって、
少し視点を変えるだけで、
好きだとか嫌いだとかに分けず、
決めつけなければ、
広い世界があると思います。
相手や自分を変えることを諦めて、
少しはマシになるように、
今ある自分でなんとかしようとするしかないと思います。
嫌いな人々や理解できないことに囲まれた世界を
そのまま見て、自分の中に入れて
その中で自分や他人を信じ、
「たんなる違い」を
好き嫌いではなく、
ただ違うのだとそのまま受け止め、
「その中でどうすることができるのか?」を
考え、実行することしか出来ないと思います。
「ライ麦畑でつかまえて」に出てくる人々や出来事、
そして、ホールデン・コールドフィールド君は、
イライラもしますが、
信念があって、
自分で考えながらもがいていて
やっぱり美しいと思います。

そしてやっぱり、
この世界は、美しく面白いことに満ち溢れています。
サリンジャー氏はクレイジーで、
すごくマトモな天才だと思います。
天才は、
「苦悩の中で新しい価値を作り出す」人なのかも
しれません。
うまく伝わらないかもしれませんが、
おすすめな本です。

暇人
120,421 views暇人です。 私のモットーは、心に{ヒマ}を持つことです。 心に暇がないと、色々見たり、考えたりするときに 行き詰まります。 今は寸暇を惜しまず考えて、行動し...
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